かなり長い道のりだった気がするけど、契約 → デザイン&マスタリングを終えてしまうと、ふうっと気が抜けてしまうんですよ、ボク…。つまり、”営業”能力が極端に低い、”プロモーション”能力が相当低い!と言うことか(いずれにしても、仕事ができないという証明ですネ(笑))…。
そんな訳でかなり以前から、実は数年前から取り組んでいたボクのレーベル『プロダクション・デシネ』の復刻プロジェクトが一個完成し、7月20日(水)に発売されました。まずこう言うのって、権利関係の調査から始めるんですが、南米は中々に手強いです。今回のようにブラジルは比較的マシなことも多いけど、それでも怪しいことが多い。そして録音が1984年とかだと、そもそも当時の紙の契約書が残っているか不安。口頭でも契約は成り立つとは言えど、後からなんか来たらヤだし…。さらにその契約の内容も大丈夫かいな?とか何とか…、もう色んな要素が入り組んで、色々と不安な幕開けになるのですが、そこからさらに進んで交渉を始めると、大概の場合、金銭的に吹っかけられるのが世の常、ビジネスの常(笑)。いったい何十年前の話してるの?ってくらいにデカイお金の話をふられることも(ハッキリ言って、このようなインディのライセンスのプロジェクト、大きな規模には成り得ないんですよ、普通。そして、今時はCDもデジタルも売れないしね…)。まぁその辺、ボクは規模にそぐわない事なら容赦なくスパッと切り捨てちゃうので(現実離れした数字を言われても対応できないし、そもそも一番いい方法は、相手が誰であろうと、”思いっきりハッキリ”と現実を言ってあげることです)イイのですが、たいていの場合は粘られます(笑)。だから、こっちの意思表示がハッキリしていればしているほど良いです。ダメな時はもう仕方ないです。お互いが満足の行かない契約書にはサインしてはいけないのです。
そして、ある程度交渉がまとまったら今度は実際の契約書にサインする訳ですが、僕の経験上、割とここが長く時間がかかる。理由は単純で、この時点で内容には合意しているのだからサイン自体は形式に過ぎない、と言う認識がお互いに芽生えやすいからだと思います。人間らしいでしょ(笑)。ので、ここは気を付けなければならないポイントです。落とし穴、とも言うね。だって、一応、まだサインはしていないから。まぁ、契約書にサインしないと、契約金も払われないので、その辺の理由で異様に早い人も多いけどね(とても良いことです)。
そしてここからは実務です。デザインとリマスター、あとはリリースインフォ作ったり。デザインやテキスト関連については、時間的にはある程度読めるのですが、最大の難関がリマスター。オリジナルのマスターテープが使える状態で、なおかつしっかりと起こしてもらえる場合は全然問題ないですが、古い作品はここが常々大問題。たいていの場合は、交渉始める時点で同時に確認しますが、サインしてから「やっぱり無かった〜」、「伸びまくってるから使えないよー」、「機材がないから起こせない〜」などなど、マスターテープ問題は、かなり重い…(今まで何度これで断念したことか)。まぁ、元からマスターテープがない(捨てた!)!って言い切られた場合には、盤から起こすというワザを使うのですが、これはちょっと高度な話(技術と根性(!)の問題)になるので割愛。デザインもある程度、ジャケットの経年化や日焼け具合などを考慮しつつやるので、無駄に経験値を求められますケド、マスタリング問題よりは気が楽ですね。あとはテキスト…、中には情報が全く貰えない作品もあって、今回のサウル・バルボーザも、権利者さん自体は、殆ど覚えてない的な、ね…。
と言う具合に、ざっくり、さっくりと書いてもこれだけのステップをクリアして初めてリリースに漕ぎ付けるわけですが、さっきも書いた通り、作品がマイナーであればあるほどビジネスとしては成り立ちません。もう基本的に大赤字です。ので、結論としては、今回も見事に”慈善事業”でございます(笑)。まぁ、そんな”慈善事業”ではあるけれども、これはぜひ残したいな、色んな人に聴いてもらいたいな、と思うから諦めずにやって来た訳です。そう、個人的にはこの作品、
は、その努力に値するかな?と思っている訳です。でもま、”慈善事業”には変わりないので、企業としてはそろそろ潮時かな、とも思っております。最後は暗い感じでこのお話はオシマイ…。結局、何の話ダ?ですよね(笑)。ちなみに、作品自体はとても素晴らしいし、中原仁さんが書いてくださった解説も読み応えがあるので、是非CDを買って読んでね。オリジナルのレコードなんて、滅多に見つからないしね。ああ、早く営業能力に優れたスタッフが見つかりますように…。